第5回:翻訳の限界
「天才は1%のひらめきと、99%の努力」
言わずと知れた、発明王トーマス・アルバ・エジソンが残した言葉です。
例えばこの言葉、クイズ番組で
「天才は1%のひらめきと、99%の???」
さぁ、???にはいる言葉は何でしょう?
とか、
誰の名言でしょう?
といった問題が出たら、
おそらく日本人でもほとんどの人は答えられるはず。
それほど有名で馴染みのある言葉だし、
努力の大切さを謳うことが日本人にフィットしたのかもしれない。
ただ、どうしてこの言葉はここまで有名になったのでしょうか?
著名な人が残したから??
良い言葉だから??
実はこの言葉、日本語訳ではそんな大したことない。
(あくまで個人の見解です笑)
この言葉の本領が発揮されるのは、英語での原文!
Genius is one percent inspiration, 99 percent perspiration.
なのです。
何が言いたいかは、もうお分かりかと思いますが
Genius is one percent inspiration, 99 percent perspiration.
と、完全に韻を踏んでらっしゃるんですね!
このニュアンスを日本語訳で出さないのはもったいない...。
あえて言うなら、そうですね~
いや、、、出てこないですね~。
なるほど!うまいこと言う!
という笑点的発想からも、この言葉は名言とされてきたということが
英語の原文からはわかりますよね!
ちなみに、もうひとつ。
賢者は、話すべきことがあるから口を開く。愚者は、話さずにはいられないから口を開く。
哲学者プラトンによる、賢者と愚者のコミュニケーションの取り方の違いを的確に表現した言葉。
この日本語訳のままでも十分意味としては通用しますよね。
しかし、ここからがプラトンの面目躍如。
英語に戻すと、
Wise men speak because they have something to say; Fools speak because they have to say something.
そうです、つまり
Wise men speak because they have something to say; Fools speak because they have to say something.
と、使う単語は同じで、語順を変えただけ!
このニュアンスを日本語訳で出すには、
う~ん、やはり無理...。
そもそも、愚者の方の “have to do” に、内圧的な意味ってありましたっけ?
外圧的、あるいは強制的に、「~しなければならない」だったはず。
だったら、賢者の方のニュアンスと重なってしまうのでは...?
そのため、件の文を日本語から英語に訳す場合、真っ当な英語教育を受けたいい子ちゃん日本人は、愚者の表現に
can't help saying
を使うのではないでしょうか?
ただ、やはりそこはネイティブマジック!
対照的に2つを並べることで、ちゃんと両者の差異は出ますし
むしろ日本語訳にする場合に、無理やり捻じ曲げていると言っても過言ではないのでしょう。
英語を勉強すべきなのは、こういった理由からも。
相手の言語を理解すると、相手の真意をより深く理解することにつながるんですね~。