第3回:株が下げる?

母語に自動詞と他動詞の概念がない学習者に、日本語の自他動詞を教えるのは少し厄介ですね。

 

勘の良い人はすぐに理解してくれるのですが

基本的には、

「が」+自動詞(ドアが閉まる)

「を」+他動詞(ドアを閉める)

というフォーマットで教え、意味を導入します。

 

 

それでも、たまに表題のような例がみられるから困った困った。

 

これは、先日某新聞紙における、トランプ大統領の言動と株価の変動に関する記事で目にした表記です。

 

 

あっかさげて!

しろさげないで、あかさげる!

などでもおなじみ、「下げる」はどう考えても他動詞。

 

赤(い旗)(「を」)さげて!

ですからね。

 

 

うーん、もし表題を学習者にツッコまれていたら、どう教えよう。

他に「が」と他動詞が結びつく例はあるのかな~。

 

 

 

とりあえず、私の見解はこうです。

 

 

【仮説1】大勢の人の意思で他動する

 

株価は、複雑な事象が絡み合って変動するものです。

 

今回のように、ある大物トップの一言や、事務所を代表するタレントの結婚で変動する場合もありますし、その予測は神をして困難を極るものでもあります。

 

なので、

株が〈大勢の人の「下げろ下げろ」という意思や言動等に基づいて〉下げる。

 

ともとれなくもないのです。

 

 

いや、厳しいか。笑

 

 

【仮説2】慣用表現との差別化

 

「無礼講とはいえ、飲み会で粗相を働いて、あいつは株を下げた。」

など、「株」というのは、本来の意味から転用して、その人や団体の評判、名声などを表す場合があります。

 

トレーダーでない場合は、こちらの使い方の方が一般的かなとも思います。

 

では本来の「株価」という意味で用いる場合、「を」を使うと意味が混同するのではないでしょうか。

 

原発事業で失敗し、某T社は株を下げた。

原発事業で失敗し、某T社は株が下げた。

 

①でもわからなくはないですが、ただ単に評判が下がった、信頼がなくなったという定性的なものだともとらえられます。

 

②では、「が」を用いることで、定量的に数値として下がった、株価の話をしているんだよ、と明確に伝えることができます。

 

特に新聞紙などの事実を正確に伝えなければならない文書の場合、どっちとも取られるような中途半端なことは書けないわけであります。

 

 

【仮説3】さげ+になる

 

株価は、上がり↑下がり↓

とも、上げ↑下げ↓

とも、言います。

 

それを動詞化する際、さげぽよ+になる → さげる

という株価特有の造語ができたのではないでしょうか。

 

株がさげぽよになる → 株が下げる

 

「ぽよ」は、この場合あってもなくても構いません。笑

 

 

 

【まとめ】

 

書いていて思ったのですが、【仮説2】がかなり有効なのではないかと。

一応筋が通った説のように思えます。

 

今のところ、「が」+他動詞は、株価や円相場等の専門語としてのみその表記を見かけますが

 

また違う場面で見かけたら、あるいは反対に「を」+自動詞という表記を見かけたら、ご報告を差し上げます。

 

 

僕は毎日あげぽよ↑↑(^O^)